感情の考察、日常の幸福

読んだからとて奇跡は起きないけれど、自分の心に素直になれたり、日常の細やかな幸せに気がつくことができたりするような、そんなブログを目指しています。

「怒り」の言語化

5歳の娘は繊細で、たまに予想もしてこない事で怒ることがある。

そういう時、私は彼女が何に対して腹が立ったのかを言語化するように試みるのだが、

この方法が他の方にも参考になるかな?と思ったので書いてみる。

 

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先日も娘がまた、予想外なことでキレてきたのだが、それはこんなきっかけだった。

 

Eテレで放送していたパディントンのアニメ(パディントンが手品をするというエピソードだった)を見た後のことだった。

娘が私にカードを持ってきて「ここにカードが2枚あります!」と言ってきたのだ。

ここで私は、(あ、アニメに感化されて手品をするんだな)と気づき、

「わかった!パディントンみたいに手品をするんでしょう?」と言ったところ、娘がキレた。

パディントンみたいだなんて!」と。

 

 

 

さあ、あなたは何が原因かわかるだろうか?

 

私は最初、全くわからなかった。

 

 

例えば、ジャイアンのようなあまり良いイメージのないキャラクターに喩えられたら嫌なのはわかる。

しかしパディントンは可愛らしいキャラクターだし、娘はパディントンのアニメが嫌いなわけではない。

 

 

○まずは言語化の大切さを伝える

 

こんな時、つまり子供が何に怒ってるか理解不明で、その理由や原因を究明したい時、私はまず、こう伝える。

 

「あなたが何に怒ったのかわからないので、説明して欲しい。そして理解したい。そうしないとまた同じことであなたを怒らせてしまうかもしれないから」と。

 

最初は理由を聞いても、「わかんない」と言われることも多い。子供は言語化にただでさえ慣れてないからだ。それに怒りで機嫌が悪くなっているので、深く突っ込まれることを面倒くさがることもある。

 

そういう場合は、こう伝える。

「理由がわからないと、同じようなことでまたあなたを嫌な気持ちにさせる可能性がある。

それを受け入れてくれるなら、理由は伝えなくてもいい。

その場合、次に同じようなことで怒らせても、怒りを感じるのは仕方ないが、それをこちらにぶつけないで欲しい。

つまり、『そんなこと言うな!』と強い口調で言うのではなく、

『嫌な気持ちになるから、その言い方はやめて』と落ち着いた口調で伝えてほしい」

と。

 

理由を知りたいのは叱るためではなく、次に同じ過ちを繰り返さないためと伝えるのだ。

ここでのポイントは、怒りを込めずに冷静に伝えることだ。

 

また、子供が自分で理由を言語化して伝えてくれたとして、その理由が腹立たしいものであっても、怒ってはいけない。

理由には良い・悪いの判断をせず、フラットに受け止めることを心がける。

 

また、こう伝えるのも良いかもしれない。

 

「人は、理解できないことで怒られると、相手のことを怖くなってしまう。そしてコミュニケーションを取りたくなくなってしまう。

あなたが理解できないことで怒りをぶつけてきたら、周りの人はあなたとあまり会話しないでおこうと思ったり、距離をおこうと思うことになる。

そうするとあなたは独りぼっちになってしまうかもしれない。

だから、理由を言葉にして伝えることは大事なんだよ」

と。

 

それでも相手が言語化を嫌がったら、それは相手の意思を尊重する。

ただし前述の通り、理由や原因がわからない限りは次に同じことが起きる可能性も高まるので、そのデメリットは必ず受け入れてもらわなければならない。

 

 

言語化が難しいならクイズ形式で

 

子供が言語化に了承してくれたら、次のステップだ。

しかし、「なんで怒ったの?教えて?」と聞かれても、子供が最初からうまく言語化してくれることはあまりない。

何故なら子供自身、それを表現する方法をまだわかっていないからだ。

 

ここで私のおすすめの方法は、選択肢が少なくとも2個以上あるクイズ形式で聞くことだ。

 

今回のケースだと、私はこのように聞いた。

 

「じゃあ、ママが思いつく原因をいくつか挙げてみるね。

1.パディントンの真似をしてるつもりなんて無かったのに、真似をしてると決めつけられた気がして嫌だった。

2.パディントンの真似をしてるつもりだったけど、そのことを見透かされたように言われたのが嫌だった。

この2つに、あなたの気持ちに近いものはある?」

 

 

選択肢が2個以上あったほうがいいのは、親が自分の答えを押し付けないようにするためと、子供が自分の気持ちとの違いを見つけやすくするためだ。

 

たとえば今回の例だと、

「もしかして、パディントンの真似をしてるつもりじゃなかったのに真似したって決めつけられたのが嫌だった?」

とだけ尋ねてしまうと、それが真実のように子供に思い込ませてしまうかもしれないし、なんだか詰められてる雰囲気になってしまって「違う」とは言いづらくなる。

 

しかし何個かの選択肢があると、自分の感覚との違いが説明しやすくなるし、クイズ形式なので詰められる感じがせず、楽しい雰囲気で話すことができる。

 

今回の場合、娘は「どちらも違う」と答えた。

さあ、どうすれば答えに辿り着けるのだろうか?

 

 

○他のケースを出してみて、どう感じるかを比べる

 

私が捻り出した答えがどちらも違うと言われたので、いったいどうすれば不快感が言語化できるだろうと悩んでしまったが、

こんな時にオススメの方法は、他のケースだとどう感じるか比べてみることだ。

 

例えば今回の場合なら、「パディントン」を他の言葉に変えるとどう感じるかを比べてみる。

 

私は娘に、他のキャラクターに改変したセリフを言ってみるからどう感じるか教えて欲しいと伝えた。

 

  • 仮面ライダーギーツ(娘が好きでは無いキャラ)みたいに、変身してるね」

→NG

 

→NG

 

私は最初、「好きなキャラかそうじゃないか」によって不快感が違うのかと思ったが、そうではないようだ。

ここで娘自身も違いに気がつき、言語化してくれた。

 

「キャラクターに喩えられること自体が嫌かも」

と。

 

しかし私が以前、「アリエルみたいにかわいいね!」と言った時には娘は怒らなかった。

 

そこで「前にアリエルみたいにかわいいって言ったら怒らなかったよね?あれはどうして」と尋ねてみた。

 

すると娘はこう答えた。

「褒め言葉のために好きなキャラを出されるのは嬉しいけど、それ以外は嫌だ」と。

そこでその感覚が本当かを確認してみることにした。

 

「キュアプレシャス(娘が好きでは無いキャラ)みたいにかわいいね」
→NG

 

「キュアフィナーレ(娘の推し)みたいに綺麗だね」
→OK

 

やはり、好きなキャラを褒め言葉のたとえとして使うことには不快感を抱かない、という結果になった。

 

 

こうしてわかった結果は、

娘はどんなキャラクターであっても、動作をキャラクターに喩えられること自体が嫌だ

ということと、

娘にキャラクターをたとえるならば

  1. 好きなキャラクターで
  2. 褒める時の形容として

なら嬉しいということがわかった。

 

ここまで言語化すると、私の『理不尽に娘にキレられた』という気持ちはすっかり消えた。理由がわかったからだ。

娘の方も、スッキリした顔になっていた。自分がどう言う時に不快感を抱くかを理解できたからである。また客観的に理解したことで怒りもおさまり、冷静になっていた。

 

ちなみに、何故動作をキャラクターに喩えられたら嫌かは、よくわからない、らしい。

これも突き詰めれば言語化できるかもしれないが、とりあえず何をしたら不快かというパターンはわかったし、『同じことを繰り返して娘を不快にさせない』という目的は達成できるので、それについては「なんとなく」のままにしておくことにした。

 

 

言語化のために大切なこと

 

子供の怒りを言語化するために、しておくのがオススメなことは二つある。

 

  1. 親自身も言語化の癖をつけること
  2. 言葉のインプットをすること

 

1の親自身も言語化の癖をつけることは、子供の心を言語化する時の練習にもなるのはもちろんだが、

子供を叱る時に理由をわかりやすく説明できるようになるという点でもオススメだ。

 

「あなたがこう言ったのがダメなの!」とただ叱るのではなく、

「あなたの言葉は、他の人にはこんなふうに受け取られて傷つけるものだから叱ったんだよ」と伝えられるようになるのだ。

 

怒っても当たり前とか、仕方ないと思うことほどやってみるといい。

たとえば、子供が約束を破ったとか、忙しい朝に「着替えて」と言ったのに全く着替えをしてなかったとか、おもちゃを投げつけたとか。

 

また、怒りを感じる時には、根底に悲しみがあったり、「〜べき」という考えがあることが多いので、自分にはどんな悲しみがあるかや、「〜べき」があるかという視点で探ってみるといいと思う。

 

悲しみという点で深掘りしてみると

「何故私は怒ってるのだろう?」→子供が約束を破ったからだ→私は約束を破られて悲しい、と思ってるんだな→なぜ約束は破られると悲しいんだろう?→そうしないと自分が蔑ろにされてる感じがするからだな

 

「〜べき」という点で深掘りしてみると

「何故私は怒ってるのだろう?」→私は『約束を守るべき』と考えているからだな→何故約束は守るべきなんだろう?→約束を守らないと、人から信用されないし、仕事をクビになったり、お金や家を借りれなくなったりするかもしれないからだな

 

といった答えが出てくる。

 

こうやって深掘りすると、子供に叱る時も、「約束を守らないとダメ!」ではなく

「あなたが約束を守ってくれないと、約束を破られた人はあなたにぞんざいに扱われたような気がして、悲しくなるんだよ。そしてあなたをもう二度とあなたを信用したくなくなるんだよ」

とか、

「約束を守らないと、人から信用されなくなって、やりたい仕事ができなくなったり、お金を借りれなかったり、家に住めなくなったりするかもしれないから、約束は守らないといけないんだよ」

と説明できるようになる。

こうして説明した方が、子供も納得してくれやすくなる。

 

 

そしてもう一つ大事なことは、怒りを言語化にした時に、どんな理由であっても自分を責めないことだ。

例えば前述の場合だと、「私って約束を守るべき!って思ってるんだ…厳しすぎるかな」だとか、「私はぞんざいに扱われたように感じてるんだ…でもそんなのただの被害妄想だし良くないよね」だとか、そういった感想を付け加えないことだ。

逆に、「私は素敵!」「私は正しい!」みたいな褒め言葉もかける必要はない。

自分の観察リポートだと思えばいい。

「私は〇〇と考えたから(感じたから)怒っているんだな、以上!」で終わらせるのだ。

 

なぜ感想をつけてはいけないのか。

それは、自分の考えをフラットに捉えるためだ。

 

自分に対してフラットな見方ができるようになると、子供の言葉もフラットに聞けるようになる。

子供に理由を尋ねた時に、その理由がどんなにくだらなく、馬鹿げたものであったとしても、「ダメでしょ!」と子供を否定する言葉をかけなくなるのだ。

あなたは「怒らないから正直に言ってみて」と親に言われて正直に言ったところ、怒られて理不尽に感じたことはあるだろうか?あれはされると、二度と正直に言う気をなくしてしまうものだ。

フラットに物事を捉えられるようになると、「怒らないから正直に言ってみて」も言葉通りにできるようになる。

 

 

2の言葉をインプットすること、についてだが、ここでオススメな方法は絵本を読むことだ。

私自身は娘にとにかくたくさんの絵本を読み聞かせてきたのだけど…たくさんの本を読むよりも一つの本を何回も読む方が良いという説もあるらしい。

 

なので絵本なんてあまり持って無いし…とか、図書館に借りに行く時間もないし…という人は、子供のお気に入りの本を何回も読んであげると良いと思う。

 

また、子供が泣いた時や怒った時、その理由が明白な時はそれを言語化するのも良いと思う。

「食べたいお菓子が売り切れで、悲しかったね」とか

「見たいテレビが見れなかったことに、怒ってるのね」というふうに。

 

 

怒りの言語化については、こちらの記事も参考になるかもしれないので、もし興味があれば読んでみて欲しい。

 

[理論]負の感情の扱い方《イライラ・モヤモヤ編》 - 感情の考察、日常の幸福

 

 

ちなみに、娘にはこれまでいろんな理不尽(に見える)な理由でキレられてきたのだが笑、

その一部をここで紹介しようと思う。

 

2歳〜

○可愛いと言われたから

○フォークを使えたことを「すごい」と言って拍手したから

 

3歳〜
○「疲れてるなら座る?」と聞かれたから

○「おやつは何買うか決めた?」と聞いてきたから

 

5歳〜
○人形を使ってお笑いごっこをしてる時、「オッパッピー!」と言った時にママが「小島よしおやん!」と突っ込み入れたから

 

さて、この怒りの理由は何で、どうやったら解決するかあなたは想像できるだろうか?

私が娘と一緒に言語化し、考えた解決策はこうだった。

 

2歳〜

○可愛いと言われたから

理由:可愛いではなく美人と言われたかった。

解決策:容姿を褒める時は「美人」と形容する。

 

○フォークを使えたことを「すごい」と言って拍手したから

理由:褒められるためにしたことではなかった。大袈裟に褒められると馬鹿にされたように感じた。

解決策:何かができた時には、感情をこめずに「〇〇できたんだね」とだけ言う

 

3歳〜
○「疲れてるなら座る?」と聞かれたから

理由:「座れ!」と押し付けられてるように感じた

解決策:「座る?歩く?」というふうにいくつかの選択肢を出す

 

○「おやつは何買うか決めた?」と聞いてきたから

理由:考え中だったのに口を挟まれて思考を邪魔されたように感じた

解決策:考え中のときは「いま考え中」と伝えておく

 

5歳〜
○人形を使ってお笑いごっこをしてる時、「オッパッピー!」と言った時にママが「小島よしおやん!」とツッコミ入れたから

理由:お人形遊びをしてる時に外からツッコミが入ると急に現実に引き戻される感じがして恥ずかしくなった

解決策:人形遊びをしてる時にツッコミは入れずに黙って見る

 

 

こう理由を明らかにすると、娘は決して理不尽に怒ったわけではないことがわかると思う。

 

 

こうやって娘の不快感に配慮することを「甘い」とか「ワガママに育ちそう」と思う方もいるかもしれないが、私はそうは思っていない。

 

なぜなら、繊細さというのは否定すると、かえってイライラして余計に些細な物事に腹が立ってしまうというのを、自分の経験から知っているからだ。

 

繊細さは否定するのではなく、「こう感じてるんだね」と受け入れることで、強くなるのだ。

 

実際に、かわいいと言われるのが嫌いだった娘は、今ではかわいいと言われても平気になったし、以前ほど些細なことで怒りをぶつけることが無くなった。

もし私が、「褒めてもらってるんだから喜びなさい!」と叱っていたら、不快感を無理に抑圧することになり、今でもかわいいと言われることが嫌に感じていたのではないかと思う。

 

ただ、子供に合わせると言っても、『不快だからといって怒りはぶつけてはいけない』ということを教えることは必要だとも考えている。

 

私はいつも、「怒りは感じてもOK、でもそれを周りにぶつけることはマナー違反だよ」

「怒りをぶつけると、相手もあなたに怒りをぶつけ返したくなるから、怒りを込めずに伝えることが大事なんだよ」と伝えている。

 

 

 

この話が、何か参考になると嬉しい。